2016.04.28

タックス・ヘイブン~非居住者の定義と日本での課税関係

不動産投資は税金との戦いとはよく言われていますが、どんな職種でも少しでも支出を減らして手残りを増やしたい…と思うはず。そのための方法の一つ、節税。海外に資産を移して節税に、という方法も聞きますが、そう簡単ではなさそうです。

タックス・ヘイブン~非居住者の定義と日本での課税関係

(この記事は満室経営新聞3号・2010年6月に掲載された連載「国際税理士が語る海外満喫ガイド 海外移住のゼイム」です)

リーマン・ショックによる金融危機の影響は、国際ゼイムの世界にまで及び、最近では、一般のメディアでも大きく取り上げるようになってきている。

タックス・ヘイブンに強まる風圧

読売新聞では、「タックス・ヘイブンから脱税情報 ケイマン諸島と国税庁が合意」(2010.4.2朝刊)という見出しが一面に報道された。また、NHK土曜ドラマ「チェイス国税査察官」(2010.4.17第1回放送開始)では、タックス・ヘイブンやパーマネント・トラベラーといった国際的租税回避スキームをモチーフに、国税局査察部(マルサ)と脱税コンサルタントの対決が描かれている。

国際的脱税を巡る攻防を描いたドラマに注目が集まっている。

こうした流れの背景には、OECD(経済協力開発機構)やG20において、「タックス・ヘイブンは脱税の温床である」と圧力をかけ、銀行情報の開示を求めていることがある。先進国の多くは自国の居住者に対して「全世界所得課税」を課しているが、このシステムの下では、非居住者になることで合法的に居住地国のゼイキンから逃れることができる。「全世界所得課税」という理想的な課税システムも、グローバル化の波に飲み込まれ、機能不全を起こしている。

こうした課税システムの網をすり抜けるかのように、非居住者のステータスを手に入れ、グローバルな租税負担を軽減しようと、海外移住をする「勝ち組」が増えてきている。

非居住者の定義と日本での課税関係

海外移住の税務メリットは、非居住者のステータスを得られることだが、現実にはそう簡単ではない。日本の税法上、非居住者とは、日本国内に「住所」=「生活の本拠」がない者をいうが、「セイカツのホンキョ」とは?といった事実認定をめぐり、納税者と国税当局のあいだで争いが起きている。「武富士事件」、「ハリーポッター事件」、「ユニマット事件」では、居住地国が日本か海外かということで争われた。これらの事件からの教訓は、非居住者としての形式的な要件を満たしていたとしても、実質的に日本に「生活の本拠」があれば、居住者と認定されることだ。安易な考えで海外に移住し、非居住者のステータスを得たとしても、税務当局から否認されては本末転倒である。

海外移住をして日本の非居住者となった場合に、日本での課税関係はどうなるだろうか。不動産関係の所得は確定申告が必要になるが、それ以外は10%~20%の税率で源泉徴収され課税関係が終了するものが多い。しかも、日本の株式のキャピタル・ゲインや日本国債の利子などは非課税となるほか、住民税もかかってこない。

また、相続税や贈与税についても、財産を譲り受ける者が海外に住んでいれば、海外にある財産は原則として非課税となる。これには、被相続人・相続人ともに5年超、海外に住んでいなければならないという規制「5年ルール」があるものの、相続人が日本国籍を有していなければ、この適用はない。国際結婚や海外での出産、外国市民権の取得など、外国籍を持つ日本人の数は増え続けている。こうした「国際相続」のタックス・プランニングは、今でもなお有効である。

非居住者の課税は国内源泉所得に限定される。もし非居住者になった後に、海外資産を売却すれば、売却により得たキャピタル・ゲインなどは、日本で課税されることはない。しかも、ニュージーランドのように、移住先の国でキャピタル・ゲイン課税がなければ、ゼイキンは全くかからないことになる。これが海外投資の出口スキームである。

現在の日本の財政状況などを考えると、経済的自由を手に入れた「勝ち組」の人たちは、海外に移住すべきか否かを真剣に考える時期にきているのかもしれない。海外移住は、より豊かで充実した人生を送るための有効な選択肢の一つであり、最もスマートでシンプルなタックス・プランニングでもあるのだから。

次回は、「海外ロングステイ・海外移住の魅力」についてお話しします。

田邊国際税務事務所・代表税理士 田邊政行
横浜国立大学大学院修了後、サイエンス・セミナー企画運営会社を経て、税理士に。 PricewaterhouseCoopersバンコク事務所での駐在経験を活かした、グローバルな人・もの・お金の移動に係わる税務コンサルティングを得意とする。2008年7月、田邊国際税務事務所を開設。国際相続や海外移住など国際税務に特化したサービスを展開している。DVD「資産防衛に有利今、話題の国際税務節税」好評発売中。http://www.itax-japan.com/

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